子どもの「やる気」「モチベーション」
- 養浩館道場 館長

- 2025年12月29日
- 読了時間: 4分
子どもの「やる気」「モチベーション」について。
子どもが「やる気」を持ってくれれば色んなことが上手く回り始めると思いがちですが、実は子どもの「やる気」はさして重要な要素ではありません。子どもが「やる気」になってくれれば、毎日の稽古で課題を意識して取り組んだり、自らビデオを見て研究したり、稽古日誌を書いたり....,と期待すると思いますが、やる気になっても子どもがそれらを自主的にやることはありません。なぜならまだ自分でやる能力がないからです。子どもがそれらを出来るようになるために必要なのはそのためのトレーニンであって「やる気」ではありません。そして、大人がしてあげるべきことは、どうにかしてやる気を引き出せないものかと考えることではなく、地道な日々のトレーニングに伴走してあげることです。
仮に褒めたりのせたり盛り上げたりして子どもの「やる気」を引き上げることが出来たとしても、短期的な成果(小学生の間は褒めてのせると上達し易い、試合で結果が出やすい)には繋がっても、その子が将来に亘って壁を乗り越えていく力を伸ばすことにはなりません。
剣道の上達に必要な力は、
・自分の身体の動きを客観的に捉える力
・課題を認識する力
・課題に粘り強く取り組む力
・それらをやり通す力
ですが、これらの力は「やる気」とは殆ど関係ありません。
これらの力をつけるために必要なのは、
①必要な「基準」を示すこと(こういう力をこの程度まで身につける必要がある)
②それを身につけるためのトレーニング(※)を行うこと
③トレーニングを一緒に伴走してあげること
です。
(※)トレーニングとは
・目標達成に必要な技量と現在の技量との差を認識
・達成期限を認識
・期限を区切って課題をクリアしていく
↑
子どもに目標を書かせても無邪気に掲げて終わりです。毎日「自分なりに頑張って」も目標に到達するわけではないことを認識させて初めて目標の意味が出ます。必要なのは達成すべき基準と期限を認識させ、期限内に技量の不足分を埋める努力が必要と認識させてあげること、そしてその努力(↓)を着実に実行させることです。
↓必要な努力とは、
・課題発見(様々な課題の中から「ここを直せば全体がガラッ!と良くなる」ポイントを探す)
→課題解決のための処方箋を共に探る(課題の根本原因を探る:特に心理面は親のサポートが必須)
→毎日の稽古でトライ&エラー
→ 自分の身体の動きを客観的に捉えて修正(子どもは脳内のイメージと実際の身体の動きが一致しない→ポイントを絞ったビデオ撮影も有効)
→試合錬成で試す
→稽古で修正
の繰り返し。これを一緒に考えて毎日フォローしてあげることです。
具体的には、
・出来るだけ稽古を見てあげること
・稽古帰りの車内で質問してあげること
→「今日はどんな稽古したの?」「それにはどんな目的があるの?」「収穫はあったかい?」
→「明日の稽古では何をするの?」
・試合グッズの準備や管理
・試合スケジュール管理
・試合当日の動き方(昼食タイミング・内容、アップメニュー)などを高いレベルで要求すること
もトレーニングのひとつです。見守ることは必要ですが、手を出して手伝って上げる必要はありません。
これらの日々の地道なトレーニングは往々にして「やる気」を削ぐ方向に作用します。学年が上がり、基本組→選手組→特練と上がって行くほどに増える課題の多さや難しさを知れば知るほど「やる気」は萎えます。でも、うんざりしながらも地道に取り組んで必要な力を身につけて行くことが大事です。
長い目で見て子どもたちに本当に必要な力は「かべに向かっても怯まず諦めずチャレンジする力」であり、それを「楽しいと思える力」です。そのために私が道場で心掛けていることは、「高い基準を提示し、私がかべになる」ことです。この「高い基準を提示し、かべになる」ことも子どものやる気やモチベーションを引き下げる方向に働きます。でも長い目で見れば、かべを乗り越えるために何をすべきかを考え、取り組んで行く力をつける方が競技力と人間力向上に繋がります。
大人が子どものやる気を引き出してあげるのではなく、「ここは自分のやる気は自分で奮い立たせないとやっていけないところだ」と示し、ここでしっかりとトレーニングを積ませることです。このトレーニングは、人生に通じます。
壁を乗り越える力は、親や先生が背中を押し、挫けそうになったらフォローしてあげられる小中学生の時期に鍛えてあげることが重要です。高校生からは親の手が届かなくなります。子どもが折れかかった時に「へこたれるな」と背中を押し続けることです。「やる気」がなさそうに見えても、心が安定していて毎日ちゃんと道場に来て地道なトレーニングに淡々と取り組んでいれば良いのです。


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